an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

日記

2012年初の

読書報告、二冊ばかりまいりましょう。 並べてみるとどちらも表紙がなかなかいい感じ。 丹精こめて作られた本を手に取るのは読書人の喜びの一つだ。 ◆『脱力の人』正津勉◆脱力の人作者:正津 勉河出書房新社Amazonひょんなことで手に取った本書。詩人が、詩人…

2012年 新春

あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。いくつになっても心弾むのはお正月のご馳走。 小さい頃は料理上手な父方の祖母が手の込んだ美しいおせち料理を作り、家族でその重箱を受取りに行くのが大晦日の楽しみだった。だが…

アンダーグラウンド

賞がらみでの上映のタイミングなんかもあるのだろう、話題の新作が目白押しである。あれも観たい、これも観なきゃと身悶えするこの時期に・・・ はりきって旧作を観にいってしまいました。 エミール・クストリッツァ渾身の大作、『アンダーグラウンド』 戦時下の…

クートラスの思い出

ロベール・クートラスという人をご存知だろうか。 10代のうちからフランスのあちこちで石工などの職人として働き、パリに出てからはアーティストとして油彩画、グアッシュ(透明感のない水彩)、デッサン、テラコッタなど多数の作品を残した。中でも、タロッ…

老いと時間

ちょっとボンヤリしていたらもう12月も半ば。 この時期、誰しも思われることだろうが、月日が、時間が経つのが本当に早い。 徐々に速度を上げて狂ったように回転を繰り返す時計針、チカチカと点滅した録画の早送りのごとき生活、時間の流れは限界を振りきり…

古本まつりとか

毎年恒例、秋の古本まつりの収穫をば。 ◆『リテレール(1992夏号)書評の快楽』◆ 「安原顕 独断編集!」を銘打ったリテレールは全部持っているつもりだったが、これを見落としていたようだ。不覚。 武田百合子『日々雑記』の書評を金井美恵子が書いてるよ!◆…

『アウシュヴィッツは終わらない』プリーモ・レーヴィ

『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』を読む。 ええ〜この晩秋にさらにうすら寒くなるようなこんな本・・・勘弁してよ、と思ったそこのあなた、まあそう言わずにちょっと聞いておくんなせえ。原題である「これが人間か」という言葉から…

けむりの居場所

煙草はまさに人間の営みそのもの。喜怒哀楽、それぞれに煙草がつきまとう。 行間から立ちのぼる紫煙を追えば、これぞ至福の時。煙草は素晴らしい。 この本は、煙草に捧げるオマージュである。 煙草にまつわる小話を集めた『けむりの居場所』野坂昭如の序文で…

そうだ、宇宙、行こう。

そう遠くない将来、1500万だか2000万だかで宇宙旅行が楽しめるようになるらしいが、それだけのお金があればまずは地球上をあちこち行きたいな、と思う私は今のところ宇宙への旅は本の中だけで充分である。 そうだ、宇宙、行こう。よろしければ、ご一緒に。 ◆…

そうだ、福島、行こう。

今、国内旅行に行くならば目指すべきは北である。 ・・・思い立ったが吉日とばかり、段取りよく同行者を探しだし有給休暇を申請し、そこそこイケてる宿をおさえ観るべきものと買うべきものをピックアップし、ぬかりなく旅割飛行機チケット(およそ半額!)まで…

これが私の生きる道 その②

・・・というわけで、「これが私の生きる道」第二弾は、私と同世代の人が書いたものから紹介してみようという寸法なのである。 ◆『本と怠け者』荻原魚雷本と怠け者 (ちくま文庫)作者:荻原 魚雷筑摩書房Amazon 寒くなると、蒲団が恋しくなる。一旦蒲団に入れば、…

岸和田のだんじり

重さ四トンのだんじりを走りながら一気に回すのは容易ではない。 だんじりにはハンドルが付いていないし、構造的に元々曲がることを想定してつくられてはいない。 やれないことをやってしまう。それも過剰に、いともたやすくやってのける。 そこがいい。それ…

カズ・カレンダー

世の“きょうだい”がしばしばそうであるように、私と二つ下の妹は似ているところがあまりなく、女にしては低音の声以外は顔も性格も好みも特技もまるっきり違っていて、手先の不器用な私からすると途方もないような、複雑で細かそうなグラフィック系の作業をP…

これが私の生きる道 その①

京都駅に隣接している伊勢丹百貨店には私が所属している法人の総務部があって、自転車でちょくちょく出かけるところの一つである。 お金を預かったりハンコをもらったり書類を届けたりすることが主な用事であるから、ピューッと行ってピューっと駅に戻ってく…

この夏の読書

昨年に引続き、美山町での鮎つかみと五条坂の陶器まつりをきっちりこなし、お盆期間は粛々と出勤し、合間に高校野球を見ながらビールを飲んだり、ビールを飲みながら『ゾンビランド』を観たり、『伊藤潤二の猫日記よん&むー』を読みながらビールを飲んだり…

フランスものとか

最近読んだものから、おフランスの二冊をピックアップ。 ◆『小さな家』ル・コルビュジエ小さな家―1923作者:ル・コルビュジェ発売日: 1980/01/01メディア: 単行本ル・コルビュジエが、レマン湖畔に両親のために建てた「小さな家」のデッサン・写真に解説を添えた…

シュヴァンクマイエル展

ヤン&エヴァ・シュヴァンクマイエル展へ。 「共産党政権下でブラックリストに載りながらも創作活動を続けてきた、チェコ第三世代のシュルレアリスト」と紹介されるより、『アリス』をはじめとした、変な人形アニメを撮るおじいさん、くらいのイメージしかない…

『人斬り』

私が生まれたのは彼が亡くなった年である。 なので、自分の年齢の節目節目に没後30年だ40年だと書店がニギヤカになり、ついつい「彼について書かれた本」など手にとってみる。久しぶりに小説なんかも読んでみる。途切れ途切れではありながらも、思えばずいぶ…

名古屋、桜桃

所用あり、名古屋で一泊。 午前中にさっさと用が済んでしまったので、まあせっかくだからと街中へ繰り出したものの、かつて友人が住んでいたこともあってランドマーク的な場所にはすでに行っているし、興味をひかれる展覧会や(・・・タッチの差で棟方志功回顧…

青木繁展

青木繁展に行く。平日に訪れたのだが、なかなかの盛況ぶり。 「海の幸」は小さかった。想像していたサイズの半分くらい。 「とてもでっかい絵」を想像させる、何か不思議な力がこの絵にはある。 せっかくなので間近で眺めてみたのだが、見れば見るほど、そし…

『八犬伝』

雄渾豪壮にして波瀾万丈、まさに「妖夢のつづれ錦」のごとき「虚の世界」と、滝沢家の平凡な生活、というより狷介・剛腹・吝嗇、著しく協調性に欠けた馬琴の「実の世界」が入れ子になって進行するのである 関川夏央の書評風文学エッセイ、『本よみの虫干し』の…

自分が一番つまらない?

4月からプールに行き始めた。 今時スポーツジムはどこにでもあるが、主に予算的事情で条件に合うところがなかなか見つからず、「ううう、体動かしたい。泳ぎたい。」と悶々としていたら、職場近くにナントカ健康増進センターという公立の施設を発見したのだ…

ほかほかのパン

『誘拐』→『原発事故はなぜくりかえすのか』→『警察(サツ)回り』→『市民科学者として生きる』・・・と本田靖春さんと高木仁三郎さんの“現場もの”を交互に読み、それぞれ思うところが多かったので何か一つネタにしようとつらつら考えていたら、だんだん肩が凝…

編集グループSURE

mixiでまだレビューだけを細々と書いていた頃、「あなたの紹介する本は面白そうだけど、本屋さんにないことが多くて残念・・・」というようなメッセージをもらうことが何回かあった。その度に「・・・そう言われればそうかも。でもネットで簡単に、しかも廉価で入…

著作紹介

今時はお金を出しさえすれば、誰でも自分の書いたものを本にすることができる。 素人ブログの書籍化は日常茶飯事だし、私などは身内に本を出した人間がいるため、一言に「著作」とはいってもわりと冷めたスタンスでいる。しかし、「誰かの依頼を受けて」執筆…

五百羅漢図

幕末の絵師・狩野一信が描いた秘蔵の羅漢図100幅を一挙公開! 赤瀬川原平さんは「モツの煮込みに見えた」といい、山口晃さんは「何もそこまで」といった「五百羅漢図」。観にいってきました、江戸東京博物館へ。(両国国技館の隣!) HPでチラリと見たその絵…

夢にいつか見た あのファンタジー

追えば行き着く所 桟橋 ここは 住めば都の大都市 明日も脱けられない島国・・・ まさか「はらいそ」が聴けるとは思わなかった。感涙。 はい、連休のど真ん中に行ってきましたよ、細野晴臣ライブ。会場は日比谷公会堂。 何十年ぶりかの全曲ヴォーカルの新譜はま…

花には香り 本には毒を

京都市内の桜はそろそろ見おさめ、私の地元では今が盛り、先週末訪れた滋賀県・信楽はまだ三分咲き、そして被災地・仙台では梅が満開だという知らせが届いた。 それぞれの地にゆるやかに、だが着実に春がやってきている。 ▼▲▼▲▼ ◆ジョルジュ・シムノン『倫敦か…

三月のいろいろ

朝からあんまり気分のよくない日だったような気がする。 ニュースでは「今日は花粉が多いです!」と警告していたし、毎月1回の煩わしい経理関係の打ち合わせに出向かなければならない日だったし。 やむなく今年初めて薬を飲んで出勤、案の定ものすごい眠気…

ジム・オルーク、『Waltz with Bashir』、エドワード・サイード

皆さんこんにちは。 「実はほとんど聴いたことないけど、安いし近かったんでつい行ってみたところとってもよかったのよLiveレポート:第三弾」の時間です。(・・・シリーズだったのか)今回のお目当ては「石橋英子with ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久」 メ…