an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

この夏の読書

昨年に引続き、美山町での鮎つかみと五条坂の陶器まつりをきっちりこなし、お盆期間は粛々と出勤し、合間に高校野球を見ながらビールを飲んだり、ビールを飲みながら『ゾンビランド』を観たり、『伊藤潤二の猫日記よん&むー』を読みながらビールを飲んだりして、無精を自認しているわりに意外と勤勉なところをみせている今夏のわたくしですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さらに今年は、こんなイベントにまで足を延ばしてみたのだ。
下鴨涼納古本まつり。(ふふ・・・毎度のことながら地味なネタだ・・・)
そういえばここにはまだ行ったことなかったな。暑いし、買物のついでにチラッと1時間ね。・・・・・・気がついたら3時間たってました・・・。

京都の夏の邪悪なまでの強い日差しをぐっと和らげてくれる木立、涼としたせせらぎ、カキ氷やうどんの屋台、紙芝居、魅惑的な本の数々・・・うーん、こんなすばらしい環境での古本まつりはそうないのではなかろうか。

       関西の本読み人よ、夏は糺の森に集うべし!

      


      


今回は釣果もバッチリでご満悦なのである。ご紹介しよう。

◆『鉱物』
“石の図鑑”ではありませんで(←それもおもしろそうだけど)。
全国の外国文学好きがひれ伏す出版社、国書刊行会の「書物の王国シリーズ」第6巻。
石や宝石にまつわるエッセイや伝説・伝承、小説、詩歌を集めた異色のアンソロジーである。岡本綺堂柴田宵曲、明石海人に塚本邦雄、そしてもちろん宮沢賢治稲垣足穂。古代中国の奇談珍談、西洋の博物誌、ジョルジュ・サンドやノヴァーリスの作品も楽しみだ。状態良く、半額はお買い得であった。
◆『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子
説明不要の名著でしょう。キレイな単行本で¥300、これを買わんでどうする。
◆『小説より奇なり』伊丹十三
『ヨーロッパ退屈日記』『女たちよ!』など、今頃すっかり見られなくなったダンディズムを匂わせる名エッセイもおすすめだが、本作は対談やインタビューをおもしろおかしく新聞記事風あるいは落語風にアレンジした、遊び心たっぷりの一冊。
衝撃の告白!!各界名士に脱毛の悩みを訊く!!」「犬か猫か!! 論戦愈々赤熱!!」などといった大仰なタイトル(傍点までつけて強調)がまず目を引き、登場するは若き日の中村真一郎井伏鱒二山口瞳江藤淳幸田文安岡章太郎筒井康隆岡本太郎・・・etcといった豪華ぶり。
・・・こりゃ立読みですますわけにはまいりませんな。
◆『犯罪百話<昭和篇>』小沢信男
・・・いうなればこれも「小説より奇なり」かな。
私は小沢信男さんの飄々とした文章の味が好きなのだが、これは犯罪にまつわる小話を集めたもので、曰く

ここに一つの事件があり、そのなまなましい速報から、やがて換骨奪胎のフィクションまでの長い道程があるとして、その両端は除外する。
尾頭ぬきの、ひたすら胴体の美味しいところを、各種各様、百花繚乱に盛りつけてお届けしよう、という板前の心意気です。

とのこと。
まだ前半部の「サギ師」と「泥坊」(←この中の内田百輭『泥坊三昧』が最高。渋面で間の抜けたことばかり考える、相変わらずいかした爺さんだ)の章までしか読めていないが、ちょっとイイ話からえっと驚く逸話、硬派なルポルタージュからせつない回想、名高い犯罪者から名もなきコソ泥まで盛りだくさんの犯罪百話。
うん、こりゃ板前の腕は上々だな。
昭和の犯罪であるからには、阿部定が登場しないわけがない。当時の東京朝日新聞の記事や訊問、彼女について坂口安吾が書いたものが楽しみだ。
「それにしても、犯罪は、たしかにその時代の意匠である」(by井上ひさし
改めて、昭和という時代のいろんな面をのぞきみたいと思っている。


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どう見てもブレブレの失敗写真ですが、なんとなくこの夏お気に入りの一枚。
       (・・・ええと、息子じゃなくて甥なんです・・・)


      

・・・早く一緒に甲子園やジョニー・トーの映画に行きたいな、おばちゃんは。


(2011年8月17日記)