an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『アースダイバー』中沢新一

「アースダイバーとなって、上空に舞い上がったのち一気に大地の底へと突入していく、垂直的な知性の冒険を試みる」
トーキョー・ダイビング!
東京は、関東大震災や大空襲など壊滅と再生をくり返したことによって、歴史や伝統から分断され、最も合理的かつ画一的な人工都市に変貌した・・・などと思っていました、私は。
俯瞰で見ると、古代に聖地(死にまつわる場所)であったところは、現在でも寺や神社があり、東京タワーや大学や歓楽街や皇居といった所も、そういった一種特異な空間の中にある。つまり「現代の東京は地形の変化の中に霊的な力の働きを敏感に感知していた縄文人の思考から、いまだに直接的な影響を受け続けているのである。」

中沢新一は学者のわりにフットワーク軽く、大風呂敷広げる調子のり兄ちゃんというイメージがありますが(そうか?)、ここではそれがうまく活かされており、少々強引な展開にもうまく酔わされてしまいます。そう、東京の地下には龍がとぐろをまき、地上にはタナトスがひしめいているのだ。

アースダイビングマップ付き、写真もたっぷり掲載されています。斬新で新鮮で、美しい本です。
そして、この人はいつもタイトルが魅力的ですね。『悪党的思考』とか『森のバロック』とか『哲学の東北』とか『精霊の王』とかね。実にそそられます。
(2006.3.9記)


>追記
髪が白くなっても相変わらずスマートな中沢さん。
めずらしくプライベートなことも書かれたこちらもどうぞ。