- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1993/01/10
- メディア: 文庫
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どことなく焦燥感と倦怠感をにじませる初老の小説家が、微酔しながら遠い過去の記憶を思い起こします。海をめぐる喪失の物語・アクアマリン。酔狂な中国人と血の物語・アルマンダイン・ガーネット。ムーン・ストーンに漂う白い宮殿の幻想・・・このように3つの物語には宝石が、深い深い記憶の底に沈殿した物語に光をあてるように登場し、微量の酒がそれに艶を与えています。
「さびしいですが、私は、さびしいですが、」と失ったものを嘆いて嗚咽する高田先生の姿が心に迫る「掌のなかの海」も印象的ですが、圧巻なのはやはりラストの「一滴の光」でしょう。求めていたのは幻想の白い宮殿などではなく、今目の前にいる輝く滴をふりまく生身の「女」であったと。
本作は著者の絶筆となりました。これは、ちょっとかなわないなと思ってしまう。
30代40代なんてホント青二才。歳を重ねないとわからないことって、やっぱりたくさんあるんですよね・・・。
(2006.3.7記)
>追記
ベトナムもの、オーパもの・・・なかなか手が出ない状態です。読みたいんだけどなあ。
この人もとても人気があって、埋もれていた対談集や名言集っぽいものも次々と出ている様子。