- 作者: 宮沢章夫
- 出版社/メーカー: WAVE出版
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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『牛への道』『わからなくなってきました』などのエッセイで楽しく脱力していたらナニ、『資本論』を読むだと?マルクス?経済学?唯物論?共産主義?・・・はい、困惑して思わず購入してしまいました、本書。
「一般的価値形態」「相対的価値形態の量的規定性」「抽象的人間労働」なんていう頭をかきむしりたくなるような語句を前に「わからない。」「いよいよわからない。」「なにをいっているのだおまえは」などと言いつつ七転八倒しながら読みすすめていく様はまさに格闘・・・といいたいところだが、途中どうにも苦しかったみたいで、少々無理があるたとえを使ったり、日記(ブログ)を挿入してなんとか場を持たせたりして、やや内容が散漫な印象はある。でも、この超がつく難物に真っ向勝負な姿勢、好感が持てるではないですか(笑)。それに、時折以下のようなことが何気なく書かれていてはっとするのだ。
「わからない」を「わからないとして味わう」である。この「味わう」がなければ本を読むことにどれほどの意味があるだろう。単なる「書物からの理解」は、いつだって「現実」の前では脆弱であり、「現実」の強さに嘲笑され続ける。しかし、だからこそ読み続けること。読み続けるしかないと私は考える。(中略)「読みの深さ」と、「味わう」というニュアンスにこそ「現実」と向かい合うだけの、「書物からの理解」の力があるのではないか。
この本を読まなければ、『資本論』なんぞの内容を全く知らないまま生涯を終えたことだろう。かのカール・マルクスが、火のような「批判の精神」を持つ人であったということも。
「ここがロドスだ、さあ跳んでみろ!」
(2007.1.8記)
>追記
この人の文体、今ブログを書いている若い人にすごく影響を与えていると思います。
そっくりな文章たくさん見かけるし(笑)。
やっぱりこれが好き。