はい、毎日新聞からネタいただき。著名人が選ぶ2009年「この3冊」。
年末恒例あちこちでなされるこうした企画、本好きのはしくれとしては興味津々、著名人だけでなく、名もなきブログの片隅に書かれたものさえチェックしてしまう。
そこで私も・・・と思いついたはよかったが、あらいけない。私ってば新刊をほとんど読まないヒトだったのだわ、そういえば。最新情報に疎いというのもあるけれど、「あっ、これは!」と思ってネットショップの買い物かごにどんどん放り込むも、結局ゴソゴソかき回したあげく古いものを優先して購入することがほとんどである。時間がたつと評価が安定してきて選びやすいし、廉価で入手できることが多いしね・・・というわけ。こう見えてわりと慎重派なのである。
なので、こんなのを考えてみた。「2009年:今すぐ読みたい新刊3冊」。
◆カート・ヴォネガット『お日さま お月さま お星さま』
ヴォネガットが書いた唯一の絵本で、デザイン界の偉い人(アイヴァン・チャマイエフ・・?)との共作ということもあってたいそう美しく(表紙も素敵ですね)、イエスの誕生をやさしく謳いあげるような内容であるとか。シニカルな無神論者であるはずの著者が一体どんなものを・・と思うとこれはどうしても早急に入手したい物件のひとつである。ハイデガーの専門家が書いたエッセイ、なんて聞くとややとっつきにくそうだが、タイトルからは文学的な香りが漂って魅力的だ。氏の読書歴や身近なことを書かれたコラムなどが楽しめる内容らしい。小林秀雄の話もぜひ読みたいし。
◆古井由吉『人生の色気』
『杳子』でこれはしんどい、と思って以来すっかり遠ざかっている古井先生だが、畏怖すべき孤高の文学者であることは重々承知している。そんなお方による人生指南。
2010年には「不惑」の歳を迎えるこの私(・・・惑いまくりだっつの)、粛々とありがたく拝読せねばならぬ。なんたって「色気」だもの。
さて次は、このところ携帯していた「どのページから読んでもOK、気軽に楽しむこの3冊」をご紹介しよう。一般にはあまり知られていないもの、あるいは専門的だったり難解だったりする素材を、誰でも楽しめるように工夫して書かれた読み物は私の大好物である。
・・・よかったら、ちょっと覗いてみませんか。
それまでのユーモラスな口調から一転、
(仏像が)現在まで残っているのは、人の思いの連鎖があるからだ。仏像を大切だと思い、信じて、残していきたいと願う−そういう想いがないと仏像は消えていってしまう。
という言葉には、そうだなあ・・それは仏像に限らずいろんなことにあてはまるよなあ・・と思いめぐらしてみたり。
◆飯沢耕太郎『きのこ文学大全』
・・・私などが思いつくのは「不思議の国のアリス」と宮沢賢治モノくらいのもんで・・・
よくまあこれだけ集めたな・・・と感嘆すること必至。
コミカルなもの、うまそうなもの、幻想譚(泉鏡花が秀逸!)、毒と狂気を秘めたもの、そしてもちろんエロいものだってご用意しております。
・・・きのこパワーによって炸裂した想像力(創造力も)の豊かさをとくとご覧あれ。
昔の、あるいは特別な地域(アイヌ、ネパールなど)だけで使われていた見たことないような道具を、あたたかみのあるイラストで紹介してくれる。野外作業で使われる道具が多くとり上げられていて、私には珍しいものばかり。
ショイコ、背負いカゴ、ソリなどの運搬道具のその多彩なこと!
作業衣・小道具・民家などの記述も多く、柳宗悦や民芸ファンにはたまらない一作かと。
明治の昔にチベットを旅した「河口慧海の旅支度」なんて章もあり、そのひとつひとつのディテールに感心して読みふけってしまうのであった。
(2009年12月22日記)