an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『子どもは判ってくれない』内田樹

子どもは判ってくれない (文春文庫)

子どもは判ってくれない (文春文庫)

行動の軸となるものの考え方や他人とのかかわり方。あるいは言葉が伝える可能性とその限界。それらを日々悩ましく思いながらも結論先送り、試行錯誤と暗中模索をくりかえし、痛い目にあって初めて少しばかり学習する・・・そういうもんだと思っていた。「大人がとるべき正しい行動基準と思考方法」なんて、そうそう簡単に説明できんでしょうと。
そこへこう言って颯爽と登場したのだ、このおじさんは。

みなさん、大人というのは、こういうふうに考え、こんなふうに行動するのです。不思議でょ?でも、それには主観的には合理的な理由があるのですよ。ご説明しましょう。

ごく日常的な話題を取り上げた軽妙・平易な短文、大変に読みやすい。だがその視線はただごとでないほどに鋭い。しかも思わず声に出して唸ってしまう鮮やかな理論展開に、凝り固まったアタマのツボを絶妙タッチでほぐされるような快感がある。新しい発見ってやっぱり気持ちいいものなのだ。
私ってば結論先送りってただ怠慢なだけじゃん。全然アタマ使ってねーな、と思い知らされるのである。・・・まいりました、と言うほかない。

本書の性質上、内容は具体的に紹介しないが、ひとつだけ。

相手が自分の言葉によって「縛りつけられ」、身動きならなくなっているありさまを、深く親密な、かけがえのない関係の成就だと勘違いをする人、それが「呪いをかける人」である。

「呪いのコミュニケーション」と題されるこの一節に戦慄が走った方、ぜひご一読ください。
(2007.2.15記)


>追記
・・・すっかりファンですよ(笑)。
著作が多いので全部はとても読みきれませんが、ブログなどは定期的に目を通しています。考え方の指針を示してくれたり、いろんなことに気付かせてくれたりする人です。
これもとても勉強になったな。

私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)

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