an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

イーハトーブ旅日記〜その①〜

デカい台風が沖縄にじりじりと迫り来ていた晩夏某日。
コイツが日本列島を北上してきたらえらいことやな・・・さすがは毎回キッチリ雨を呼ぶ女、今回は豪快にも嵐を呼んだか・・・と一時はアタマをかかえたが、どういう気まぐれか台風も秋雨前線もするりとかわし、夏の日差しの中にも時折さわやかな秋風が吹きぬける好天の下、遅い夏休みを取った私は機嫌よく岩手県花巻空港に降り立った。

さあ、まず目指すは盛岡。
石川啄木宮沢賢治がその青春時代を過ごした場として有名な、見どころ多い杜と水の都だ。
盛岡城跡公園へと向かう市内周遊バス(安くて便利!)にひょいと乗り込み、繁華街をふと見ると、いたるところに半被を着た人たちがうろうろ・・・今日ってお祭り!?

      


天気がいいだけでも感涙モノなのに、お祭りが見られるとはなんたるラッキー。
笛や太鼓の鳴物と、子供の声でお囃子に独特の合いの手が入る。様々な趣向の豪華な山車が何台も町中を練り歩くそうで、夜が更ければそれぞれに点灯され、さらに美しいことだろう。

盛岡秋まつりにすっかり気を良くして次は、『注文の多い料理店』を出版したという「光源社」を見にゆくことに。


      


現在はギャラリーやカフェ、ちょっとしたお土産物屋さんになっているこの場所、しゃれた洋風の建物にやわらかい日差しが射しこみ、落ち着いた佇まいでとても素敵なところだ。当時の面影をそのまま残しているのだろうか。


      



光源社のすぐ裏には川面が光る北上川



      



      

ザ・宮沢賢治節。・・・こんなのを読んでしまうと、雪の盛岡も見たくなりますね。

まあそれにしても・・・宮沢賢治記念館にイーハトーブ館、童話村にはポランの広場、「いわて銀河鉄道」は当然走っておりますし、演劇やお祭りなどの各種イベントも、整然と並べられたお土産品もそのほとんどが賢治がらみ、お菓子やワインのネーミングからうつむき加減でそぞろ歩く有名な賢治のシルエットをかたどった小物類まで、もうねえ、盛岡・花巻両市は・・・・・・


      

          宮沢賢治に甘えすぎです。

彼の童話はわかりにくいものやどうもスッキリしないお話が多いですし、詩にしても、血を吐くような生々しい思いを方言で綴った泥臭いものなども多く、とうてい万人向けのものとは思えないのですがねえ(『春と修羅』が大好き、などという人にお目にかかったことないぞ)。

思いまするに、「銀河鉄道」から「爽やかなファンタジー」を(『銀河鉄道の夜』は実はたいそう暗い物語なんですが)、「雨ニモマケズ」から「朴訥かつ実直な、理想の東北人」的イメージを、わりに安直な感じで商売用に拝借した、と。その結果、客受けはよいが実相からどんどん乖離していくというこの状況・・・ご本人も草葉の陰で微苦笑されているのではあるまいか。


そしてぬかりなく名物の盛岡冷麺を食し(う、美味いっ!)、次なる目的地へ。
・・・やはり遠路はるばるここまで来たからには、被災地のために何かしたい。
ボランティアで何ほどの役に立つとも思えず、また念入りな計画を立てる時間も根気もなかった私、このようなツアーに参加いたしました。


      

あこがれの遠野、そして釜石へ、いざ!

・・・・・・続く



(2012年9月24日記)


追記:読み返してみたい本たち