さあ「復興応援ツアー遠野・釜石号」だ。
事前に電話で参加申込みをした際、「新花巻駅の改札出た右側にね、観光案内所がありますから。定刻にスタッフが迎えに行くのでそこで待つように」との指示を受け、今や遅しと現場でツアー・スタッフを待ち構えていた。今日もいい天気だ。
定刻を2分過ぎたところで鳴るケータイ。
ややイラついた口調で「時間ですので。すぐバス乗り場に来てくださいっ」と言われた私は、「す、す、すいませんっ!」と謝るなり慌てふためいて駅構内を飛び出したのだった。
・・・さて、この幕開けが何を象徴しているかというと、「カンジわる〜」ということでは全然なくて、たいへん時間的にタイトなスケジュールだったということだ。
効率よくいろいろ回ってお客様にご満足いただき、そのまま夕刻の新幹線や飛行機に間に合うよう送り届ける。このミッション死守すべし。・・・当然だろう。
だが、そうでなくても万事スローペースでいつも団体の一番後ろにいるような私である。「は〜い、ここの見学は15分でお願いしま〜す」などと言われると(ワタシ的には半日くらいいたいのに)、もう切なくて切なくて。
しかし。もちろん得難い体験をたくさんさせてもらったのだ。
釜石ではボランティアの方が「震災の語り部」としてバスに乗り込まれ、物馴れた様子でお話しされる。地元の小・中学生がほぼ全員無事に避難した「釜石の奇跡」、ご友人が車中で津波に襲われ、たまたま仕事用に置いていたハンマーで窓をたたき割って間一髪の脱出をされた話、「ここは大丈夫だ」と油断して避難しなかった人が多く犠牲になったこと・・・
車窓から見る分には瓦礫なども片づけられ、それほど痛々しい風景を目にすることはなかったのだけれど、建物の片隅に小さな祭壇が作られていたり、基礎だけになった家屋跡に雑草が生い茂っているのを見て、発作的にドッと涙が溢れるのにはまいった。
人気の仮設居酒屋。残念ながらランチタイムは閉まってます。
時間がなかったので(笑)、ちょっとだけ、魚市場で干物などを買って釜石を後にする。
遠野では「千葉家(住居と馬屋をL字型につないだ曲り家)」を車窓から眺めた後、「かっぱ淵(常堅寺)」と「伝承園(遠野物語をモチーフにした観光用施設)」を訪れる、というプランになっていた。
民話・伝承の地として名高い遠野、どれほど魅力的なところなんだろう・・・・・・
はい、田舎でした。
きっとここ、夜まっくらですごく恐いだろうな〜という感じの田舎。なんでまた、この地域からあの『遠野物語』が出現したのだろうかと思わず考えてしまうような田舎。
「遠野物語効果」はやはり絶大で、道の駅などは驚くほど観光客で賑わっていたが、ふと目をひと気のないほうに転ずれば、どこか時の流れにおいていかれたかのような、長閑で平穏な地が広がっている。リンゴの低木で赤とんぼが羽を休める。
ああやっぱり、自転車で1日かけてまわったりして、もっと土地の空気に触れていたかったな。
かっぱはいるかい?
「オシラサマ」は馬と娘との物語から生まれた神様。
(井上ひさしの『新釈 遠野物語』がエロくてナイス)
次回はいよいよ世界遺産だ!(・・・まだ続くのか)
≪おまけ≫
北上市の鳥料理専門店「鳥ん坊」にて。
・・・今までの人生で一番うまい親子丼だった・・・
(2012年9月27日記)
- 作者:柳田 国男
- 発売日: 1976/04/16
- メディア: 文庫
- 作者:ひさし, 井上
- 発売日: 1980/10/28
- メディア: 文庫