an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『安曇野の白い庭』丸山健ニ

安曇野の白い庭 (新潮文庫)

安曇野の白い庭 (新潮文庫)

現代日本文学における“アンタ、どうみても小説家って顔には見えないね”ランキングの不動の一位は中上健次であるわけだが(笑)、次点は花村萬月かこの丸山健二でキマリでしょう。スキンヘッドに不敵なサングラス、現在は初老のちょい悪坊主ってな風貌ですが、若い頃はチンピラ感ありありでした。

この人の書く小説は詩のような幻想的なムードの中に一筋の青白い反骨精神が貫くような独特の世界があり、エッセイでみられる潔い「筆一本・男一匹」な感じがなかなか好ましく、気になる作家の一人であります。
そんな男の庭作り。「ガーデニング」じゃなくて「開墾」ですよ、これは。
安曇野の厳しい自然の中で、生き方を模索するように無我夢中で木を植え花を植え育てる姿には鬼気迫るものがあり、「自然への挑戦」という言葉が頭をよぎる。自然に挑むからには、完結することはないのだろう。 心血そそいだその庭は、ワイルドな中にも微妙なバランスがあって本当に見事なものだ(美しい写真多数掲載)。ぜひとも一度みてみたいと思わせる。
庭作り、家作りに関する奮闘エッセイではあるけれども、彼の一本筋の通った生き方や考え方(全面的に肯定はできないけどね)が存分に楽しめる一作であります。
・・・老いてますます熱いこのオヤジから今後も目が離せない。 
(2006.4.26記)


>追記
・・・すっかり辛口社会派の感が。
小説では『見よ、月が後を追う』、エッセイでは『夜、でっかい犬が笑う』が好き。
タイトル似てますね(笑)。