an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『闇に消えた怪人−グリコ・森永事件の真相』一橋文哉

社長の誘拐に始まり、“かい人21面相”を名乗った犯人グループ(間違いなく単独犯ではない)が怪文書をマスコミにばらまきまくって警察を嘲笑、翻弄したあげくに平成6年に時効となった企業恐喝事件である。高村薫の『レディ・ジョーカー』の衝撃もさることながら、舞台となったのが北摂・京都南部・栗東といった私にとってごく身近な地域であったことと、面妖極まる関西弁の脅迫状が当時まだ新聞もロクに読まない凡庸な中学生だった私でさえ、ただならぬ異様な事件として記憶の片隅に残っている。

驚愕の事実が順を追って次から次へと明らかにされていく。会社組織内の骨肉の確執、大阪府警のすさまじい執念の捜査と葛藤。流通・株業界に蠢く総会屋、仕手集団、そしてあらゆるマイノリティ組織の関与の可能性。・・・もうなんというか、ウラ社会の一大スペクタクルなわけで、ミステリーとして最高に面白い読み物です。

あぁなんという深い業のもとでこのような事件が起こり、そして巻き込まれる事になってしまったのか・・・このサスペンスフルな書によって得られるものは、真犯人を知ることより大きい。
『レディ・ジョーカー』→本書(文庫が出ているようなのでそちらがいいかも)→『グリコ・森永事件−最重要参考人M』(大谷昭宏宮崎学著)の順で読めば、アナタもグリコ・森永事件通に!!・・・・・・べつにならなくてもいいのだが。 
(2006.5.4記)


>追記
もちろん、これらもおすすめ!