an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

しあわせなランチタイム

 
                
          しあわせなランチタイムを
             過ごしました


昭和の香り漂う写真を添えて、キャリア・ウーマン時代にお気に入りだった食堂の面影を思い起こす、ちょっぴり切ない内容を綴った知人のブログの一節に目をとめ、ハタと考えた。
はて、私の平日にしあわせなランチタイムなんてあったっけ・・・?・・・というのも私が最初に長く勤めた職場は、午前中はさながら戦場のようで、出荷手配やトラブル処理でてんてこまい、電話がパタリとやむお昼時には手つかずの見積依頼や図面依頼のFAXが机に散乱といった有様で、「チッ、もうお昼か。仕事もたまってるしゴハン食べるのめんどくさい・・・」と心の中で舌打ちするような毎日を過ごしていたのである。そして食べるものといえば不味いコンビニ弁当かパンを数十分でかきこむという具合。
・・・これはいかん。我ながらなんて不幸なランチタイムだ。
とはいえ、「それなりにおいしく、いろいろ選べて栄養のバランスが良くしかも低価格」という夢のような昼ごはんにありつけるのは、社員食堂があったり、毎日丹精込めたお弁当を作ってくれる人がいたり、あちこちにいいお店がある街中にお勤めしていたり・・・どちらかというと恵まれた一部の人たちだろう。ああ哀しきは格差社会(←ちょっと違う)。

そこで、「お昼はいいかげんに済ませがち、「しあわせなランチタイム」など思いもよらぬ」という人にぜひとも読んでいただきたい本を紹介しよう。
そして、しあわせを共有してほしいと思うのである。


◆『定食と古本』今柊二

文字通り著者行きつけの古本屋と定食屋を紹介した本だが、神保町ってこんなにスバラシイ定食屋が多いの・・・と感嘆する一冊。500円、600円とすごくリーズナブルなのにボリュームたっぷり、しあわせな時間を過ごせるに違いない店ばかりなのだ。
定食屋さんが持つ気さくで間口の広い雰囲気をそのまま醸す無邪気な語り口はとてもチャーミングで、気持ちばかりか味まで伝わってくるような気がして、読んでいるとこちらまでうれしくなってしまう。

続けてエビフライへ。香ばしく揚がっていて、これはいいエビフライだ。いいエビフライを食べると幸福感が増してくる。おかげでなんだか幸せに満ちてきたなあ。さらに、付け合わせのマカロニサラダを食べると、これがカレー味でとても丁寧につくったのが伝わる味。パセリもおいしい。細部にも手抜かりはないし、米もはてしなくおいしい。全身に多幸感があふれてきた代々木の昼下がりなのだった。

・・・しかし私は「ラーメンにライス」はありだと思うけど「ラーメンにチャーハン」はちょっとキツいと思うのだな(本書では何度かこのコンビが登場する)。


◆『孤独のグルメ』原作:久住昌之 作画:谷口ジロー

この漫画はずいぶん前から評判を聞いていた。うん、たしかにおもしろい。
絶妙の間合いと「こういう感じわかるわかる」的な軽い既視感とほんのり漂うユーモア。
井之頭さんはいつも1人で黙ってご飯を食べているし、特におもしろいことが起こるわけでも有名店の料理を食べるわけでもないのに、ここには「しあわせなランチタイム」がつまっている。
絵の力も大きいと思うが・・・不思議な魅力のある漫画だ。何度でも読みたい。


さてさて、ここで現在の私のお昼ごはん登場。

配達してもらって300円ぽっきりという衝撃の安さ、おかずの種類も多いし味も全体的に薄味で誠にけっこう。材料はたぶん全部中国産だと思うけど(おい)、このお弁当とインスタント味噌汁のおかげでほっと人心地つく感じ、やれやれ、やっと「しあわせ」に一歩近づいたかな。



(2012年5月18日記)