an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

メイド・イン・フィンランド

皆さんはフィンランド、と聞いて何を連想されるだろうか。
森と湖とオーロラとサウナの国?シベリウスムーミンスナフキン?イケアとマリメッコ?そうそう「かもめ食堂」なんてのもあったな。

どれもこれも女性誌が今すぐ特集してもおかしくないものばかり、今やフィンランド・アイテムは女性に大人気だ。
そこで・・・人気に便乗し、こんな作品をとりあげてみました。


◆『フィンランド語は猫の言葉』稲垣美晴

東京芸術大学で彫刻なぞを作っていた人が単身ヘルシンキ大学へ。時は70年代、当時日本ではフィンランドのことなんて誰も何も知らず、著者本人さえよく知らなかった。
なぜフィンランドなのか。
フィンランドピアノ曲が昔から好きで・・」とか「画家ガッレン=カッレラについての論文を書くことになって・・」みたいなそれっぽい話をのぞかせはするが、理屈じゃなくて天啓に近いものだったのだろう。「これだぁーー!」と電気が走ったのだろう。そうでなくてはこんなことはできない。目下流行中の(←?)「日常会話が出来るようになれば御の字留学」では全然なく、いきなりフィンランド「語学」を学ぶというのだから。

友人の名前も正確に発音できない状態で、歯のないおばあさんが話す方言を聞きとったり、「言葉の使い方」の授業では、新聞の中から何百と文言をピックアップして「間違い探し」を延々とやったり。あまりにも文法が複雑なので、新聞記者でも間違えるのだ。地球の裏側からやってきた日本人の手に負えるものではないのでは・・・と少々心配になってくる。
なので彼女がフィンランド人学生と同等の試験を見事クリア、となると思わずこちらも心の中でガッツポーズ。
こういう経験を持った人は少しばかり自慢げな口調になってもよさそうなものなのに、一貫して「いやあ、最初はホント何ひとつわかんなかったんだけどね、寝ないで勉強したらできちゃったのよこれが。あははは」というような、生一本な感じの気取らない人柄がよくあらわれていて、ユニークな友人・先生・隣人たちとの交流エピソードもとびきり楽しい悪戦苦闘留学記だ。興味のある方はぜひ!

フィンランド人は相槌を打つとき「ニーン、ニーン」というそうで、これが猫みたい、ってことでこのタイトル。かわいい。


◆『ヤコブへの手紙』クラウス・ハロ監督◆

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  • カーリナ・ハザード
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フィンランドにはカウリスマキしか映画監督がいないんじゃないかと思っている方、いやいやそんなことはありません。
これはいろんな方面からいい評判を聞いていたので、まあなんとなく身構えてしまったわけですが、はい、やっぱりよかったです。多くの人に観てほしい。
自分がここに存在していることの意味と不安を、一度手の中で暖めて、そっとこちらの心に置いてくれるような、そんな作品です。


     



(2012年2月16日記)