an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『ピアノ・レッスン』マイケル・ナイマン

ピアノ・レッスン オリジナル・サウンドトラック

ピアノ・レッスン オリジナル・サウンドトラック

  • アーティスト:サントラ
  • 発売日: 1993/12/08
  • メディア: CD
マイケル・ナイマン。
英国のピーター・グリーナウェイという偏屈監督の映画音楽でおなじみの人で、その作風はバロック調ミニマル・ミュージックというか、現代音楽がおうおうにしてそうであるように(全然知らんがたぶんそうだろう)、大仰なフレーズが反復される強迫神経症みたいな音楽である。一度バンドを引き連れてきたライブに行ったけれど、生の音は想像以上にシャープで、空気がピリピリするような迫力があった。その中で客に背を向けピアノを弾くM・ナイマン、さすが客に媚びない英国人や天晴れ。
おそらく彼の音楽の中で最も有名な曲であるこの『ピアノ・レッスン』メインテーマの甘美にしてエモーショナルなメロディはいつまでも耳に残ったものだ。

・・・何がしかの障碍によって抑制されていた狂おしい思いと、心がざわざわするような切なさをゆるやかに解き放つような旋律は、この映画のストーリーにぴったりだった。・・・誰かを傷つけることになるけれど、明日への希望も見えないけれど、それでも私は、今すぐに、走って恋しいあなたに会いに行くのだ・・・こんな息詰まる台詞が聞こえてきそうな、饒舌な音楽である。
恋ってこんなんだったわね、そういえば。忘れてたけど(笑)。しかもそういう状況で走ったことないし。・・・なんていう私みたいな無粋な人間にさえ、つかの間の陶酔をもたらす一曲だと言ってしまおう。

ガタカ』『キャリントン』『ことの終わり』『ナビィの恋』・・・これらの音楽もそんな風だった。(すべて映画もおすすめである)ピーターと別れて正解だったね、マイケル。


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(2007.2.27記)


>追記
「客に背を向けピアノを弾く」ってヘンなの、と長らく思っていたけど、
これはアレか、「弾き振り」ってやつか。もっとよく見ておけばよかった・・・