an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『向田邦子の青春』向田和子

向田邦子の青春―写真とエッセイで綴る姉の素顔

向田邦子の青春―写真とエッセイで綴る姉の素顔

30代以上の独身女で若干インテリきどり、私モノわかってます、みたいな人が好きな女性作家っていうとまず幸田文武田百合子須賀敦子、そして向田邦子・・・って感じがしませんか。そういう「いかにも」を意識的に避けてきた天邪鬼なこの私(あ、でも百合子さんも須賀さんも好きやな〜)。しかも彼女は脚本家であり、その全盛期のドラマをリアルタイムで知る世代ではなかった。
・・・では何故この本に興味をひかれたか。それは彼女が大変な別嬪さんだったから(笑)。実妹である和子さんの手によって、若かりし向田邦子の秘蔵の写真が多く掲載されています。意志の強そうな目線をまっすぐに向けて、しゃれたワンピースを着てベレーをかぶる彼女は本当に美しく、かおり高い白バラのようです。
一番身近にいた人が書いているのでエピソードにことかかず、かしこくて話が上手で、何でも知ってるお姉ちゃん−仕事に悪戦苦闘するお姉ちゃん−遠い過去と大切な人を慈しむ暖かいまなざしを感じるいいエッセイです。
おしゃれや洋服に関するエピソードが特に印象的で、ハーフコートを徹夜で作ったり(!)、古着でスカートを作ったり、一晩で妹たちの帽子とミトンを編み上げたり、やると決めたら全力投球。昔の人ってみんなこうだったのか・・・?
この人は、世を忍ぶ(死語・・・)苦しい恋愛をしていたけれど、自身のことは何も語らず、人のことはささいなことでも察して気配りするような女性であったようです。これほど魅力的な人ならば、世のキレ者女性陣があこがれてやまぬはず。

久世光彦氏の『触れもせで 向田邦子との二十年』。
こちらは色っぽくて切ない。おすすめです。
(2006.7.23記)


>追記
現在でも折に触れ、彼女について書かれた本が出るようです。
私はやっぱりこれ。

向田邦子との二十年 (ちくま文庫)

向田邦子との二十年 (ちくま文庫)