- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1980/04/29
- メディア: 文庫
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惣菜日記より始まる自分ちの台所事情と嗜好、子供のころの思い出の屋台、忘れがたき人と共にした名所・名物・・・食べ物にまつわる文章は、ネタにはことかかなくとも、どうにもその人の素の価値観(品性といいますか・・・)が出てしまうので人様に読ませるようなモノを書くのは、これ容易ではありませぬ。
料理の作り方を淡々と説明するだけのところもあるのだけれど、これが実にうまそう。余計なことを言わないのでよりダイレクトに伝わってくるのですね。絵を書く人(カバー画もそう)だっただけに、シンプルな表現の妙で豊かな風景を喚起させる文章です。
ほどよいノスタルジーと大人のユーモアがいい味付けになっており、思わず含み笑いするようなエピソードも多く退屈しません。
・・・渋紙を張りつめたような風貌の老船頭に酒を一升買わせ、小船に揺られて二人して冷酒をすすりながら、のんびりと、秋の陽ざしの明るい播磨灘をわたって行く・・・この贅沢。 たかが食い物エッセイとあなどるなかれ。大吟醸の味わいです。
(2006・8.5記)
>追記
小説にもおいしそうな場面がよく登場するそうです。
いつか読んでみたい。