- 作者: 宮内勝典
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/07/05
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 31回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
その事件から39年たった今、突然作者は憑かれたようにサイゴンに飛ぶ。
・・・師よ、あなたは一体何者だ・・・。
内容が内容だけにジャーナリストが書いたルポルタージュだったら、もっと殺伐とした気の滅入るような読み物になっていたかもしれない。しかし、作者はベトナム・カンボジアのうだるような熱気と人間に対する好奇心とその深淵を探ろうとうまく物語化したように思う。
件の僧侶が乗っていた車を展示した寺から始まり、僧侶の親族と生家の発見、そして焼身供養(恐ろしい言葉!)を演出したという僧との出会い・・・じわじわとその姿ににじり寄っていく様はスリリングでミステリアス。
その僧侶がどのような人間だったのか、匂やかな蓮の花を思わせる東洋の思想にこのような激烈な魂が宿ったのは何故なのか。
「信じるに足るもの」を作者と一緒に熱にうなされながら探り求めるような本です。でも、答えは出ないのです。
(2006.9.28記)
>追記
普通のルポルタージュにはない、不思議な読後感を覚えています。
今年は激動の年でした。著者の言動が気になります。