an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

高野山で読む本は①

夏の大きな仕事が一段落したので、ふとした思いつきで残っていた夏季休暇2日を土日にポンポンとくっつけてみた。行楽の季節のちょっとした長期休暇に心躍ったが、今から誰やらと相談・段取りして遠出をするほどの期間の余裕もないので、前から行きたいと思っていた高野山へ、一人気ままに出かけてみることにした。

改めて紹介するまでもないだろうが、高野山和歌山県北部に位置した山地で真言密教の修行道場であり、高野山真言宗の総本山であり、荘厳な伽藍と何十万という墓碑を擁した日本屈指の聖地である。
ふもとの橋本市に住む友人夫妻の案内で初めて訪れたのはもうかれこれ15年以上も前のことだ。友人のアグレッシヴな運転のおかげでひどく車酔いし、「おえ〜気持ちわり〜」と俯き足を引きずるようにして行った奥の院。夥しい数の苔むす石塔が連なる参道の景色はあんまり思い出せないのに、鬱蒼とした巨木の森のひんやりした空気にふれてみるみる気分が回復したこと、弘法大師御廟では、暗闇の中に蝋燭の炎がゆらゆらと神秘的に浮かんで見えたことなどが長く心に残っており、「ここ、なんか他とは違う・・・」という記憶の残滓をもう少しクリアにしたいと思っていたのだ。
また、常日頃の諸々でたまった疲労・・・とまではいえないものの、うっすらと身体に付着した俗事の塵芥を、一度ぶるぶるとふるい落とせるようなところに行きたいな、という気持もどこかにあったのやもしれぬ。

もしかすると、高野山は深い山中にあって行き着くまでにいろいろ乗り継ぎえっちらおっちら・・・というイメージを抱いている方がおられるかもしれないが、実は大阪の難波駅から急行で約2時間というお手軽さである。乗り継ぎのケーブルカーもバスも次々とやってくるし、駅にはたくさんの風鈴が飾られて我々の到着を歓迎してくれるし、あちこちでご当地キャラクター「こうやくん」が愛嬌をふりまき、お食事処と土産物屋がずらりと立ち並び、なかなかに賑々しい。外国人観光客も多く、さすがは世界遺産といったところか。
早速「壇上伽藍」と呼ばれる一連のお堂や塔をぶらぶら散策する。





名だたる観光地とはいえ山中の小さな門前町のこと、平日は夕刻6時にもなれば人通りも少なくなり、あまたあるお堂や店舗もぱたぱたと閉まってひっそりしてしまう。
そうなると、奥の院へ向かうのは翌日のメイン・イベントにしていた私は特にすることがなくなってしまい、早々に宿坊へと向かったのだった。



・・・続く


(2013年9月30日記)