an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

赤い風船と白い馬

さて今回は、珠玉の映画紹介で幕開けとしよう。
アルベール・ラモリス監督『赤い風船』と『白い馬』の二本立て。
どちらも1950代にフランスで作られた40分足らずの短編である。
特に前者は56年のカンヌでパルムドールを取っており、名作の誉れ高い一品だ。正月早々、紅白の映画か・・・なかなか粋なセレクトだわね・・・と悦に浸りつつ映画館へ。


      

      

灰色の石の街に、少年と真っ赤な風船がなんと映えること。
はっとするほどの鮮烈なカラーと構図にうっとり。
そして白い馬と少年の行く末は、悲しいはずなのに実に爽やかな余韻が残る。
二作品とも、言ってしまえば「愛しいものを、俗なるものから守るために逃げる」というごくシンプルな物語であり、淡く儚いファンタジーだ。言葉や感情の表出を最小限にしたことで見事な映像詩となった。この絶妙なバランス感覚!
デザインを勉強している人にも得るものが多くあるだろうし、なんやかや煩雑で過剰なものに囲まれてうんざりしている向きには宝物のような映画となることでしょう。ぜひ!


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4日夜、録画を頼まれていたETV特集をチラリと見る。
吉本隆明、車椅子での登場に思わず息を呑む。・・・いや、大丈夫だ。終了時間が迫っているのにとめどなく話し続け、糸井重里に「はい、そろそろ・・・ね」みたいな感じでやんわり窘められている様子を見て、御大を前にして僭越ではあるけれども、「ああ、変わってないなあ」と微笑ましく思ってしまったのだった。
一度だけ、講演に行ったことがある。
阪神大震災の痕跡がわずかに残っていたことが記憶にあるくらいだから、もうずいぶん前のことだ。そのイベントが行なわれたのは関西随一の高級住宅地域とは思えない古びた公民館風のところで、中は畳だった。
あ、そこにザブトンあるよ、そこもっとつめて・・・的アットホームな雰囲気の中、聖書の「ヨブ記」について訥々と語り始める。クライマックスであるところのヨブと神との対話部分について「ここをじっくり読みますとね、神様のほうがずいぶんつまんねえこと言ってるんだな」と、ボソッと言ったことがとても印象に残っていて、大変偉い人だと聞いているけれど、えらっそーに講釈をたれるようなタイプの人とは全然違うな、と思ってなんだかとてもうれしくなったのを覚えている。
そしてその後どんどんしゃべりが熱っぽくなり、企画者が文字通りどうどうどう、みたいな感じで終了を促しに来たのである。
決して滑らかな弁舌ではないし、同じことを何度も繰り返されるので正直なところ聞いていてじれったい。人前でしゃべるのは得意じゃないんだろうと思う(←これ全然違う。大得意でアジテーターだった。追記)。それでも伝えたいことがいくらでもあって、ちゃんと伝わっているのか確認もしたくて、どうにも止まらないんだろうな、きっと。
いつの日か、その思想の片鱗でもいいから触れてみたい・・・とは思うものの、著作のタイトルの意味すらわからんようでは(『擬制の終焉』とか『詩的乾坤』とか・・)・・・と、うなだれてしまうのでありました。


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・・・ついに踏み込んでしまいました・・・『風雲児たち』の世界へ。

知る人ぞ知るみなもと太郎の歴史ギャグ漫画です。面白すぎます。もう後戻りできない(笑)。知人のアドバイスにより4巻から始めましたが、冒頭の「宝暦治水伝」にいきなり目頭熱くなり、続く「蘭学事始」と平賀源内登場にワクワクし・・・。
あのキュートな絵柄とハデなギャグで歴史的偉人をぐっと「身近な好人物」にしてしまう、漫画ならではの手腕、いや全くお見事です。
一級エンタテイメントとして楽しみつつも、改めて「日本の歴史、全然知らんなぁ。日本人なのに・・・」としみじみ思ったり。
これからもゆるゆる、楽しんでいく所存です。

(2009年1月6日記)