an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

幻のボン書店

時は1930年代。自分で活字を組み、印刷をし、名もなき新進気鋭の詩人たち(北園克衛春山行夫安西冬衛ら)の詩集を刊行していた小さな小さな出版社があった。
主にモダニズム文献を扱う古本屋を営む著者は、このボン書店が世に送り出した詩集と雑誌をきっかけに、刊行者でありまた詩人でもあった鳥羽茂(「しげる」ではなく「いかし」と読ませるとか)にただならぬ興味を持ち、足跡を追ってその生涯を一冊の本にした。内堀弘著『ボン書店の幻』。

ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫)

ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫)

「華美に走らず通俗に陥らず」、「「ル・コルビュジェの建築やエリック・サティの音楽に現れたシンプルで洗練された感性」をもって作られた瀟洒な詩集を刊行し続け、一瞬の僅かな輝きを残して彗星のように姿を消したボン書店。
小柄で病弱、髪を長くして人懐っこそうな笑顔を浮かべる鳥羽茂を直接知る人は少なく、この「幻の出版社」についての取材はスムーズではなかったようだ。雑誌の同人や近所の人物から数少ない証言を得、資料を丹念に読み、時には慎重に推測を重ねる。その姿を徐々にあぶりだしていく行程は、落ち着いた筆致ながらとてもエキサイティングで、昭和初期のモダニズム旋風吹き荒れる当時の詩壇の空気を感じさせるのに充分だ。
採算を度外視して1人で好きな本を作っていた鳥羽茂の後年は「文庫版のための少し長いあとがき」として詳しく記されるが、この幸薄かった青年に優しいまなざしと哀惜の意がそそがれ、泣かせる一篇である。
長く絶版であった本書がちくま文庫で復刊されたのは慶賀の至りだが、詩集の写真はできればカラーにしてほしかったな・・・。
ところで、本書でYMO時代の坂本龍一に喩えられる(旧態依然とした世界に一石投じた生意気な若造・・・みたいなイメージですかね)北園克衛は、デザイナーとしても有名だ。よく知られているのは雑誌「VOU」とエラリイ・クイーンの文庫表紙カバーで、積み木みたいなシンプルなデザインの青の効果的な色遣い(クライン・ブルーならぬキタソノ・ブルー)といい、レタリングといい、今見てもとてもおしゃれですね。

      


▼▲▼▲▼


京都の片田舎はしんしんと冷え込み、空気は鋭く乾燥しております。
からっ風野郎ならぬ静電気野郎な私、車のドアの開閉などは火花を放ちそうなイキオイです。・・・いかん。潤いが不足している。いろんな意味で(笑)。
・・・なので潤い補給のため行ってきました、こちらのライブ ↓


      

・・・って、どんな潤いやねん、それは!!(←皆様の気持ちを代弁してみました)

心斎橋クアトロ。ここでP-MODELを聴いたのもサンディーを聴いたのも、もう10年以上前なのね・・・と遠い目をしつつも、開演前独特の逸る空気とざわめきに心躍ります。
さあ、まずはユカリ姐さん。わー、赤が似合う!かっこいー!
・・・と、ほどよく会場が暖まったところでいよいよ真打登場だ。
フロント(コーラス2人、ホーンセクション3人)は全員セクシー美女、そこへ現れ出でたるボーカル(名前知らん・・・笑)、素肌にピンクジャケット、でっかいグラデーションサングラス、ピンクのソフト帽、思わず吹き出してしまった。
こんなイロモノ丸出しのいでたちで「好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた」だの「あんなに反対していたお義父さんにビールをつがれて」だの「コレがコレなもんで」だのといったコテコテの歌詞を、カールスモーキー石井ばりの艶声で時にはラップ調、時には演歌調で思い入れたっぷりに歌い上げる。上手いです。・・・でも目の前にいるのはハダカにピンクスーツの古田新太(・・・に似ている 笑)。
とかく下品でエロな歌詞が話題になりがちな彼らですが、演奏はなかなか音が厚く、アレンジもかっこよくてライブ映えしますね。曲もサビをキッチリ盛り上げるメロディなので初心者でものれます、踊れます。

・・・実は「チケット、タダにしたるから」というコトバにつられて来ただけなのに(そうなのか・・・)思いのほか楽しみ、ほどほどにココロが潤ったのでありました。めでたしめでたし。

(2009年1月20日記)