an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『田紳有楽・空気頭』藤枝静男

田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)

田紳有楽・空気頭 (講談社文芸文庫)

            「  夢、  夢、  埒もない夢  」

陶器が己の過去を語るからといってファンタジーではもちろんないし、チベットの人骨笛や風葬が出てくるからといってスピリチュアルなものでもないし、弥勒菩薩の化身が出てくるからといって因果応報の有難い話でも全然ないのだ。

「私」にこだわった著者が「私」を解き放つ瞬間の、この荒唐無稽。
あまりにデタラメな世界に目がくらみ、奇妙な開放感とグロテスクなユーモアにしばし呆然となることでしょう。贋物も本物も異形のものも、何もかも包み込む混沌と包容力がここにはある。
『空気頭』もそうとうキレてます。 両方一気読みしてノックアウトされましょう。
(2006.2.1)


>追記
『悲しいだけ』タイトルも内容も気になる。