an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

胸に咲くロータス

そうだ、ロータスを撮りに行こう。
すでに50日ほど季節を外れちゃってるが、それがどうしたというのだ。アトリウム(温室)があるではないか。(ビバ!文明の利器)・・・と唐突に思い立ってやって来たのは湖国の植物公園。

ロータスとは、水面にぽっかり浮かんで咲くハスやスイレンのような花の総称なのですが、この季節、名高い琵琶湖のほとりの蓮の大群生はすっかり蓮根と巨大な葉だけになっており、うーん、屋外の睡蓮のほうはどうかな・・・と歩み寄れば・・・

              咲いてました!
    
      

      

      

      

     ↓今回の会心の作でございます。(こちらは温室の花です)

      

      


・・蓮といえば、ヒンドゥーならば女神ラクシュミー、仏教ならば極楽浄土のシンポル(他にもいろいろとあるようですが)。地ではなく水に浮かんでいるのがいいのか、上を見上げて咲いているのがいいのか、共通してなにやら「聖」のイメージが与えられがちなのが不思議です。私はどちらかというと、そういう精神性よりも生々しい力強さみたいなものを感じるのですが。
それにくらべ繊細で可憐な様子の睡蓮。タイトルに持ってきたのは平沢進の名曲『Lotus』のフレーズですが、これはもうどうしてもボリス・ヴィアンの小説『日々の泡』を思い出さずにはいられません。
フランス流エスプリというのか、奇抜な言葉を用いてくるくると目まぐるしく展開する物語に「・・・マンガみたいやな」と思ったものですが、“肺に睡蓮が咲く病”に罹る美女クロエが、このエキセントリックな小説に美しい陰影を与えて、私たちの記憶に残るような作品にしたのでは、と思います。
そして忘れちゃいけない、生涯かけて睡蓮を描き続けた画家モネ。
ロータスには、時に人の心をぐっとつかんで離さない力があるようです。
あるいは、インスピレーションの閃光が。
・・・そういえば、なんとなく自信ありげに咲いてますよね。「どーよ、私!」みたいな(笑)

日々の泡 (新潮文庫)

日々の泡 (新潮文庫)

(2008年10月5日記)