an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『花森安治の編集室』唐沢平吉

花森安治の編集室

花森安治の編集室

 ≪編集する人びと・その三≫

暮しの手帖」。つつましい奥様のような雰囲気のこの雑誌が実は反骨魂あふるるチャレンジャーであることをご存知でしょうか。一切の企業広告を拒否し(!)、大手メーカーの商品の良し悪しを見極めるため、ブッ壊れるまでテストする。(←言うまでもなく大変な作業です、これは・・・)消費者にとって大事な情報だけを洗練された形で伝えようとしました。(あ、今もやってますね)
その編集長が有名な花森安治ですが、容貌魁偉にしてとてつもないかんしゃく持ち、鬼のように編集部員から恐れられていました。当時、編集部員の一人であった著者がおずおずと(よっぽど恐かったんだろうなぁ〜)その姿を書き綴ります。こんなのが上司だったら早晩ノイローゼになるところですが、「なんちゅう無茶苦茶なおっさんや〜」と笑ってればいいのでのん気なもんです。
花森安治を評するのに、多くの人が「職人」という言葉を使っています。決して妥協せず、何から何まで自分ひとりでやってのけました。おもしろいのは、その人柄からは想像もできない、やさしい、品のある絵や文字を書いたことです。「すてきなあなたに」「すばらしき日曜日」などタイトルもとても上品です。本中には多くのイラスト(カラーにして欲しかったな!)や手書き文字も載せており、その人物とのギャップを楽しんでいただきたいと思います。
 
このような暴君編集長はもう旧時代の滅びゆく存在でありましょう。しかし、まさに魂をかけて雑誌作りをする、そういう人がひとり、またひとりといなくなってしまうのは、どうにもさみしいものですね。
(2006.2.27記)


>追記
『エプロンメモ』もかわいい。

エプロンメモ

エプロンメモ

たしか、今の「暮らしの手帖」の編集長も有名ですよね。