an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『真剣師小池重明』団鬼六

真剣師とは賭け将棋を生業とする人のこと。阪本順治の撮った『王手』で赤井英和若山富三郎真剣師を実にかっこよく演じていましたが、今でもこんな酔狂な人はいるのでしょうか。
これは、著者団鬼六と直接交流があった人物の物語です。

マチュアの分際でプロ棋士をばっさばっさとなぎ倒し、“新宿の殺し屋”なんて異名を持つ真剣師・・・なんてかっこいい!と言いたいところだが、将棋以外ではとんでもなくアホンダラなおっさんなんです、これが。仕事は続かず酒はあびる、何度も恩人の金を盗んで(本人は借りているつもり)人妻とトンズラ・・・。こんなはた迷惑な生活破綻者に天才的な将棋の才能があるってんだから、世の中おもしろいもんです。
私は将棋は全くわかりませんが、彼の将棋は「定跡が完璧化した近代将棋ではなく古典的な将棋感覚で、序盤戦はお話にならないくらいにまずいが、中盤以降終盤にかけての野放図な力強い指し方は江戸期の将棋感覚である」そうです。
黙々と長時間にわたって死闘を繰り広げる「将棋」とは一体どんな世界でどんな魔物が潜んでいるのやら・・・
縛り専門の団先生(真剣の金主なんかしてたのね・・・おもしろい親爺!)が優しいまなざしをもって、破天荒な短い軌跡をドラマチックに盛り上げます。
(2006.4.14記)

     −この道より我を生かす道なし、
            この道を往く−


>追記
将棋の世界は奇人変人で満ちているとか(笑)。
読んでみたいもの、たくさんあります。