an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『ジーヴスの事件簿』P・G・ウッドハウス

事件簿・・・といってもジーヴズは探偵でも刑事でもないのだな。大英帝国の階級社会文化が生んだ「執事」であらせられるのだ。本国ではホームズ並の知名度と人気を誇るシリーズだそうです。
ちょっとアンポンなご主人バーティとその友人たちが巻き起こすトラブルを、当意即妙、そしてちょっぴり意地悪に解決してしまう軽妙タッチのこのコメディは、いかにも英国の大人のシニカルな笑いです。 優雅で知的、出すぎたマネは決してしないジーヴズですが、ことファッションに関してはバーティの悪趣味(紫の靴下とか・・・)にがまんならず、サクッといやみを言ったりするのは私の大好きな場面。

 「ジーヴズ、あのチェックのスーツだが」
 「は?」
 「そんなにまずいか?」
 「やや突飛すぎるかと存じます。」
 「でも、仲間の多くがどこの仕立て屋だと訊くぜ」
 「間違ってもそこで注文しないためでございます」

・・・・バーティ君、ぎゃふん。

バーティがなにかアホなことをやらかす→ジーヴズに頼る→バーティ変な服を購入、ジーヴズの機嫌を損ねる→ジーヴズ、それでも見事トラブルを解決する、てなワンパターン・・・にもかかわらず、次々におかしなヤツが登場して右往左往のドタバタにこちらもハラハラ。古典落語がこんな感じなのかな、なんて思ったり。
こういうの、好きやなぁ。
E・ルビッチ、P・スタージェス、B・ワイルダー、F・キャプラあたりの映画が好きな方にはたまらない小説であるはず。ぜひ!
(2006.4.9記)


>追記
イギリスのユーモア小説ってホント粋でおもしろい。
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