年齢とともに病気について考える機会が増えるわけですけれども。
例えばがんという病気について。
現代では胃や大腸を全適しても生存できるし、在宅生活を支える医療機器や制度も年々発展していて、闘病生活をユーモアあふれる文章やマンガで表現している人もたくさんいる。ビバ、現代医療&デジタルガジェット。千葉敦子さんのように鬼気迫る闘病記はもはや過去のもの。
病とともに生きる、共存するという感覚をわりに安易に受け止めて楽観的にとらえていたのだな、わたしは。
もちろんそんなに甘くはなかった。がんという病気は本当に多種多様、個人個人の体質や年齢や遺伝や様々な要因によって、まったく違う姿で出現するのだ。「どの部位にどんなふうに」現れるかによって、びっくりするほどあっけなくなすすべがなくなる。
2年前に胆管がんで亡くなった父は正月に機嫌よくトンカツを食べていたのに、3月に「余命2か月」という宣告を受けそのとおりになった。
この本の著者が余命半年と宣告を受けて「そんなことを急に言われても、」と困惑したように、突然やってくるんだよ、予告なしで。
やるしかないと勇んで挑んだ抗がん剤だったのに、私はけちょんけちょんにやられました。もう二度と体に抗がん剤を入れないと決意を固めただけのつらい一週間でした。
きつい副作用で1日起きられないというのは過去の話、今は化学療法を受けながら仕事をする時代・・・くらいに思っていた。「壁のラクガキを消すために壁ごと打ち壊す」と例えられた抗がん剤。だめじゃないか、もっとがんばれよ現代医療!
そんなこんなでちょっとしんどい思いをした本作ですが読んでよかった。自分の表現したものがこんなにきれいな本になって、誰かの心を動かす。作家としての彼女の願いが、読者が増えるたびに花開いて実を結ぶ・・・そういうイメージをずっと持っていたいです。