- 作者: ポール・オースター,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本
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もともとこの人の映画が好きで(『スモーク』『ブルー・イン・ザ・フェイス』『ルル・オン・ザ・ブリッジ』どれも傑作!)、小説といえばNY3部作を昔読んだような気もする・・・という程度。あちこちに鏤めた謎の正体を読者の想像にまかせ、そのままフェイドアウト・・・というような、実にもどかしい小説だった印象がある。そのオースターが、へえ、“犬と飼い主の感動的な物語”をねぇ。
故あってサンタの刺青を腕に施した、ややクレイジーな自称詩人のホームレスのウィリーとその相棒である雑種犬ミスター・ボーンズ。ストーリーはシンプル、このさえない2人(あえて2人、といいたい)の“死にゆく”物語だ。
ミスター・ボーンズの犬ならではの突拍子もない勘違いや人間のあしらいぶりなんか笑わせるし、ウィリー亡き後の冒険も目が離せないのだが、要所で繰り返される夢と記憶のモノローグの切なさが、この単純なストーリーに複雑な陰影を与えている。
たくさん、話したい事はあるはずなのに言葉が、出てこない。出てくるのはガラクタみたいなことばかり。最後なのに、これで最後なのに何もしてやれなかった・・・やっぱりポール・オースターの小説はもどかしいのだった。しかし、今回はそのもどかしさが胸に迫る。ああ、死ぬ時ってきっとこんなふうなのだ。
・・・なかなかビターテイストのファンタジーである。
大人の貴方におすすめする。
(2007.3.24記)
>追記
ポール・オースターは現在も大活躍です。
なんとなくかっこいい人たちが読んでいるようなイメージがあります(←なんやそれ)。