an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『一日江戸人』杉浦日向子

一日江戸人 (小学館文庫)

一日江戸人 (小学館文庫)

漫画ならば、北斎とその娘を描いた粋な『百日紅』、エッセイならばこれでしょう!
本当に江戸の町からやって来たんじゃなかろうか、今見てきたみたいにいきいきと描いています。ですから読んでるほうもすんなり江戸時代にトリップできます。こんなに江戸時代を身近に魅力的に書ける人はそういないだろうな。愛を感じます。
「義賊列伝」「江戸の色男」「美女列伝」「サ・大奥」「How Toナンパ」など興味津々なネタから始まり、江戸の食文化やファッション、相撲、趣味や旅の話など一般市民の生活文化、はては春画考までバラエティ豊か。かわいらしくてデティールに凝ったイラストもたっぷり、とても楽しめます。
江戸っ子の「おのおの“好き勝手”に、自分の信ずるがままに生きればよい」という奔放な時代の空気に触れて快い開放感を味わってください。
杉浦日向子さんは、いつも品のいい着物姿で笑顔も愛らしく酒もめっぽう強く、まわりの空気をほわ〜んと暖かくするようないい女だったのでは、と思います。早すぎる死が本当に惜しまれます。
(2006.3.6記)


>追記
今でも彼女の本はどんどん出ています(名言集みたいなのまで!)。
若くしてすでに「隠居」っぽかったけど、もっともっと作品を残してほしかったな。
こちらもどうぞ!

大江戸観光 (ちくま文庫)

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