- 作者: 福永武彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1956/03/13
- メディア: 文庫
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歳をとるのも案外悪くねぇかもな・・・とつらつら思うのはこんな時。
そんなわけで、30代以上の皆様に、昔々に読んだ青春文学の古典を再読することをおすすめする。夏目漱石『こころ』、森鴎外『舞姫』、谷崎潤一郎『春琴抄』etc・・・。必ず、昔とは違った貌を見せてくれるはずである。
やたらとセンチメンタルなサナトリウム文学・・・そんな印象しか残っていなかった本作の再読で、私は久しぶりに胸をしめつけられるような思いを味わった。若さゆえの鼻持ちならないエゴイズムとひたむきな求愛・・・そして、決して癒えることのない孤独。
藤木、と僕は心の中で呼び掛けた。
藤木、君は僕を愛してはくれなかった。
そして君の妹は、僕を愛してはくれなかった。
僕は一人きりで死ぬだろう・・・・・・。
最近、難病の恋人を抱きかかえながら「助けてくださぁぁぁい!!」なんてわめく小説がはやっていたようだけれど(未読。間違ってたらスイマセン)、主人公を叫ばせているようではまだまだ青い。苦しい愛は、声にならないのだ。
(2006.8.19記)
>追記
私は普段あまり恋愛小説を読まないのですが、時々こういう古風な恋愛ものにぐっとくることがあります。不意打ちに弱い。