an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『サザエさんうちあけ話・旅あるき』長谷川町子

海外体験モノや子育てモノなどの私的エッセイ漫画が人気ですが、玉石混合の中でどうしても手元に持っておきたい一つがこれ。
誰でも知ってるサザエさんやいじわるばあさんですが、作者のことは案外知られていないのではないでしょうか。クリスチャンであったこと、お母さん、姉と妹(旦那様がそれぞれ早くに亡くなられています)と姪2人という女ばかりの家庭で次々におそいかかる難事を乗り越え絆を深めてきたこと、大の動物好きで感激やであること・・・そして忘れ難き人びと。そういった様々なエピソードを表情豊かなサザエさんタッチでユーモラスに、軽やかに描いてみせてくれるのですからこたえられません。その観察力とセンスに懐の深さを感じます。

ロングセラーとなった吾妻ひでおの『失踪日記』(必読!)でも印象的に描かれていましたが、マンガ、ことに間口の広い4コママンガを書く仕事をしている人の創作のための消耗ときたら尋常でなく、文字通り身体と精神をすり減らして書いておられます。長谷川町子さんも胃を切るような目にあったり、何度もやめようとしたりの苦悶の日々が続くのですが、それをさらりとネタにしてみたり。いじらしいというか器が大きいというか、私なんぞはひたすら恐れ入ってしまうばかり。
 
笑えて、元気が出て、しみじみする本です。  
(2006.5.14記)


>追記
時々無性に読みたくなるサザエさん・・・集めようかなー。

また別の一面を知りたいあなたに。

サザエさんの東京物語 (文春文庫)

サザエさんの東京物語 (文春文庫)