an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

グリーナウェイとプルースト

私がせいいっぱい背伸びしてアート系の映画を追っかけていた80年代、よく話題になった監督でした。ピーター・グリーナウェイ

この度リマスター、無修正(全裸多いもんね)で代表作が上映されるとか。

 

腐る直前の果実が芳香を放つ、まさにそんな感じ。クラシカルな品とささくれたアバンギャルドが混在しているような。わりにグロテスク風味きつめなので尻の青かった私は「うへえ・・・」となることが多かったですが、『プロスペローの本』では夢見心地になりました。シェイクスピアと映画の魔術。


www.youtube.com

故・淀川長治さんがハスミンとの対談の中で「おもしろかった」と言っていた『建築家の腹』。ローマ?建築家の腹?一体どんな話なのだ。代表作もいいが、これが観たい。



本日読了。

西洋の稀覯本、空気げんこつ、レ・ミゼラブル・・・鹿島茂さんの著作には昔から楽しませてもらっている。大学の偉い先生だと思うのだけど、本作はパリの日常を取り上げて博識とユーモアを織り交ぜ、気軽にさくさく食べられるクッキーのように読みやすい小品だ。挿絵もいい。

「味覚や聴覚が無意識的記憶を引き起こす」という流れでプルーストが引用された一節が印象的だった。「通りから聞こえる物売りの声」や「紅茶に浸したマドレーヌ菓子の味」が「心の中に蓄積していた様々な思い出や記憶を解き放つのである」、そのような偶然を司っているのは、ある種の先駆的な存在、つまり「神」でしかない、と。

「記憶の神ムネモシュネが突然私に現れる」

嗅覚、匂いで不意打ち的に幼少期の記憶が呼び戻される私は(小学校の給食とか新築の部屋とか喫茶店(カフェにあらず)とか)、おお・・・・・・一般人の日常とフランス文学者の思索に接点が!と感じ入ったことでした。そういう読書は楽しいね。