an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

古本まつりの秋

さて秋も深まり、書店や新聞紙上では推薦図書の紹介など読書期間アピールに余念がない。 読書の秋?・・・・・・・わたしゃ今更そんなぬるいことは言わないよ。
ズバリ「古本まつりの秋」なのだ!
11月の本命・知恩寺を前に、前哨戦として(?)四天王寺の古本まつりへ行ってきた。
ここは初めての参戦だ。好天に恵まれ、鼻歌でも出そうな気分で天王寺駅から歩くこと10余分、大門をくぐると荘厳さを漂わせた五重塔がまず目に入り、広々とした敷地内にびっしり店舗が立ち並ぶ。息が詰まるようなわくわく感を抱えつつ、いざ出陣。


吉田健一の交遊録やスーザン・ソンタグのエッセイ、高山宏の『アリス狩り』、東洋文庫版『夢酔独言』など、前から欲しいなと思っていたものをいくつか発見はしたのだが、これはちょっと・・・と思うほど古びた品がけっこういいお値段だったりして(骨董的価値のある本ならともかく)、そうそう飛びつくような一品は現れない。まあ古本市はいつもこんな感じで、そこから「この1冊」を掘り出すのが楽しいのだけど。
さてさて、そこで選んだ「この1冊」をご紹介しよう。


悠玄亭玉介『たいこもち玉介一代』
だってあなた、幇間ですよ、たいこもちですよ。
なんとしても話を聞きたいじゃありませんか!(私だけか・・・)
聞き書きという文体の気安さもあって、スルスルあっという間に読めてしまった。
明治生まれの人は関東大震災や第二次大戦を体験した世代になるので、どうしたって波乱含みの人生になりがちなのに、この人は落語や日本舞踊の修行もした「芸人あがりの幇間」で、老年期にはちゃっかり商売にも手を伸ばすという、そりゃもう「食えない爺」なんですわ。
吉原のしきたりや昔の旦那衆の豪快な遊びの話ももちろんおもしろいが、下ネタもほうも実にいい感じ。文章にすると他愛もないことなんだけど、花柳界を知り尽くした彼が演ったら相当これ生々しいだろうな、ヤラシーけど笑っちゃうんだろうな・・・と思ってしまう。
まあ旦那、黙ってあたしに100万預けてみなよ。とことん、楽しませるよ・・・みたいなことを自信たっぷりにいう玉介さん。
そういうことに大金を使う猛者、今の日本にはたしているだろうか・・・



(2013年11月1日記)