an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

ロシア・アヴァンギャルド

滋賀県立美術館にて「ロトチェンコ + ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」を鑑賞。

タイトルの字面だけ眺めると、この暑い中、何もわざわざそんな小難しそうなものを・・と思われるやもしれませぬが、私にとって「ロシア・アヴァンギャルド」と聞いてパッと思い浮かぶイメージと申しますのが・・・
クラフトワーク『人間解体』、坂本龍一『B-2Unit』のデザインの元ネタであり、構図がなんとなく変で派手でポップで楽しく、愛してやまぬサヴィニャックの各種ポスターのテイストを先取りしているような・・・ものなのであり、もしかしてこれらより更に刺激的なものが見れるかもね、ふふふふ・・・との期待と好奇心は、暑さをもしのぐ起動力となったのである(←大げさです)。

                       

私は滋賀県にわりとよく出かける。学生時代は合宿でおなじみの場として、かつて勤めていた会社は栗東にデカい工場があり、物流だの生産設計だのといった部署の人たちとは業務上しょっちゅう電話しあうのですっかり仲良くなり、やれテニスだバーベキューだといっては琵琶湖湖畔に集ったもの。信楽参りは毎年かかさないし、最近は映画を観るのに行くことも多い。大津などは京都の隣町なのに笑ってしまうほど人が少なくて快適なのだ(あんまり人が歩いてません。いやホントに)。お正月休みに超ヒット作『アバター』を観にいったのだが、客席の三分の一も埋まっていなかったし、都会ではそう簡単にチケットが取れないイッセー尾形クレイジーケンバンドのライブにすんなり行けたのも滋賀ならでは。
そして、集客力がないにもかかわらず(失礼な・・・)、とてもいいホールや美術館があるのが滋賀県のすばらしいところである。
文化的都市として注目すべきは京都・奈良より滋賀ですよ、皆さん!

で、ここ滋賀県立美術館も手入れの行き届いた美しい庭園の中にあり、涼とした並木道あり、せせらぎあり、季節の花ありで、先般訪れた東京都庭園美術館に勝るとも劣らない。・・いや、むしろ勝っている。


      



       

     
思っていたより作品数は少なかったのだが、絵画だけでなくグラフィックデザインやオブジェ、写真、衣装や建築デザインなど幅広く楽しめる構成になっていた。
絵画作品はクレーやカンディンスキーを思わせるようなものもあるものの、やや洗練さに欠ける印象で、やはりデザインが彼らの真骨頂だと思う。文字とのバランスがユニークでハッと目を引く大胆さがあるし、色遣いもvividで楽しい。


                    


写真もなかなか見ごたえがある。ロシア未来派の詩人・ウラジーミル・マヤコフスキーの内面がにじみ出るこの不敵な面構えは、彼の名や詩をひとつも知らなくても、ぐっと惹きつけられる魅力があります。


                      
どうでしょう、J・マルコヴィッチがもう少し若かったら、演じられそうな風貌では?

この日はロシアで生れた電子楽器・テルミンの無料ミニコンサートもあり、その不思議な音色(オルガンみたいだったりストリングスみたいだったり・・)を楽しませていただきました。
指揮者みたいに両手を優雅に揺らめかせて演奏するのですが、垂直アンテナに干渉するのを避けるため、常に上半身直立姿勢でないといけないそうで、そのためか演奏者があんまり楽しそうに見えないのよね。


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このところ、猟奇殺人とレイプ魔(『チェイサー』『ミレニアム』)、銃撃戦と略奪(『狼は天使の匂い』『許されざる者』)、他人の夢の中で大暴れ(『インセプション』)、などといった物騒な映画ばかり観ているので、たまには中年女らしく山田洋次でも観てほっこりするか、と思って『武士の一分』。

・・・・・・退屈で寝そうになりました。
盲目の人もさることながら、江戸時代ってわりと日常的に刀を振り回していたわけだから、手がない(丹下左膳!)足がないなんていう人も、きっと普通にいただろう。そういう中途障害者はどんなふうに暮らしていたのだろうなあ・・と本筋と関係ないことにしばし思いを馳せてしまいました。

・・・やっぱ映画鑑賞はしばらく“若作り路線”でいくか、と思いましたです。あはは。


(2010年7月27日記)