an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

東京へ行きたしと思えども

・・・あまりに遠し。

突発的に、無性に東京に行きたくなることある。東京にはなんでもある。いつでも何か面白いことが起こっている。・・・地方在住者ならではのうっすら美化された思い入れ、とでも申しましょうか。

例えばこの秋には原宿でこんなイベントがあった。
愛聴しているTBSラジオ「ストリーム」出演者によるスペシャル対談だ。登場するのは・・・淡々と、あるいは耽々とタブーに踏み込む「永田町の地雷」ことTBS政治部記者にして中国ウォッチャー・武田一顕氏。そしてご存知「赤坂の喋る時限爆弾」こと勝谷誠彦氏。この2つの爆弾を、さあどう扱うつもりだ小西さん!(←番組パーソナリティにして国際ジャーナリストの小西克哉氏。ちょっぴりお茶目)
・・・これは絶対に見逃せない。そこでチケット発売日、昼休みに鼻歌交じりに京都駅のぴあに行ってみれば、なんと発売開始わずか1時間足らずで完売したというではないか。ええええ。強面のおっちゃん3人よってたかっての政治談議だよ?一体誰が行くんだそんなもん・・・自分を速やかに棚上げして憤慨するわたくしであった。

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そして。上野の国立西洋美術館「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展 −静かなる詩情−」今月7日まで開催されていた。東京のみ、巡回なし・・・(泣)。
あまり知られていない画家だと思うけれど、それは素晴らしいものだったそうだ。

      

振り向かない女性。脚の足りないピアノ。取っ手がないドア。誰もいない室内。
こうした素材を挙げてみれば内向的で不安定で、孤独や不安をかきたてられそうなものだが、彼の絵はひっそりとした落ち着きとやわらかな冬の日差しのような心地よさをもたらす。
エドワード・ホッパーが描くカラフルな「誰もいない部屋」にはなんとなく不穏な印象を受けるのに(私だけかな・・・)、ハンマースホイの部屋が密やかな安堵感をもたらすのは「人の心の色に最も近い色調を備えた作品」だからでは、という偶然目にした某ブログの評に大いに首肯したことであった。
とても見たかったのだが、気付くのが遅くて日程調整できず、無念。

他にも、ロフトプラスワンには一度は行ってみたいし、青山ブックセンターには毎日でも行きたいし、秋葉原イカレっぷりをちらりと覗き見たいし、月島あたりをねり歩いてみたいし、おいしいお蕎麦も食べたいなあ等々思いは尽きないのである。
・・・ああまったく、ひょいっと日帰りで行けたらな〜。


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色川武大『うらおもて人生録』金子光晴『絶望の精神史』を並行して読む。

うらおもて人生録 (新潮文庫)

うらおもて人生録 (新潮文庫)

絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

絶望の精神史 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

もちろん両者とも文句なく面白いのだけど、こんなやさぐれた爺さんのエッセイばかり読んでいては身も心もおっさんになってしまう、との危惧を抱いたわたくしは、久しぶりにドラマを、それも長編恋愛ものを読んでやろうと思い立ったのであった。


イアン・マキューアン『贖罪』。

贖罪

贖罪

映画化もされている有名な作品であり、だいたいのストーリー展開は把握していた・・・にも関わらず、作家の構成力の見事さに唸る。
思春期を迎えた少女の、戦争の、恋人たちの、老いの、この小説では様々な形の残酷が描かれる。精緻極まる情景描写と人の心が織り成すサスペンス、起きてしまったことへの悔恨の、息詰まるようなやるせなさ。そして、このクライマックスは衝撃的に予想外であった。しばし呆然とするような読後感である。
長編小説の醍醐味、ここにあり。

さ、次は山田稔さんのエッセイでも読むかな・・・ってまた爺さんかいっ。

(2008年12月16日記)