an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

新書どうでしょう。

新書ね、あんまり読まないです、はい。

・・・って高らかにタイトルに掲げておきながらなんでしょう、
この話の腰の折りっぷりは(笑)。
ええ、もちろん全然全く読まないというわけでは。

いつだったか幻冬舎のあの暑苦しい男、見城社長が「新書はデザインとかレイアウトに時間がかからないし、カネもかからない。企画がすぐカタチになるので、とても便利なスタイルだ」というようなことを言っていた。そうでしょうとも。
その上、昨今はナゼかモンスター級ベストセラーが新書から時々出る。そこで皆がせっせと出版した結果、なんかもうミソもクソも一緒くたな状況になってないですか?本の選定には時にスルドい眼力を発揮する私だが(笑)、新書は全くお手上げである。ミソとクソの区別がつかん。 それに、三流広告屋のコピーみたいなタイトルの乱発はどうにかならんのか。
・・・というわけで新書からどんどん遠ざかりつつある私ですが、これは面白かったな、っていうのを思い出してみました。(はい、暇なんです)


◆『胎児の世界』(三木成夫・中公新書

胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))

胎児の世界―人類の生命記憶 (中公新書 (691))

「過去に向う「遠いまなざし」というのがある。人間だけに見られる表情であろう」・・・冒頭からその世界観に引き込まれる。
天才肌の解剖学者による奇書、というのが一般的な評価なのだろうが、生命記憶をめぐる静かな知性と豊かなロマンに満ちた興奮すべき一作。


◆『雑草にも名前がある』(草野双人・中公新書

雑草にも名前がある (文春新書)

雑草にも名前がある (文春新書)


タイトルからしてありがちな雑学本・・・とお思いでしょう。違うんだから。
植物の興味深い記述とともに、その草にゆかりのある人たちのエピソードを絡ませた、なかなか粋な読み物なのである。
漂泊の俳人・井上井月(この人はつげ義春のマンガにもなっています。すごいです。“野垂れ死に”を描かせて日本一の漫画家であるな)、ハンセン病歌人の明石海人、島田尺草、幻視の夭折画家・関根正二・・・等々その人選が唸らせるほど渋い。淡々とした文章のタッチも心地よい。


◆『カラヤンフルトヴェングラー』(中川右介幻冬舎新書

カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)

カラヤンとフルトヴェングラー (幻冬舎新書)

知らないことばかりだったので、単純に驚きつつ楽しんだ。政治と芸術。嫉妬と陰謀。映画にしたら抜群に面白いものになりそうだ。A・ミンゲラ監督あたりでどうっすかね。

こうしてみると、新書の中には多くのお宝が眠っているんだろうなという気がいたしますね。これはスゴイよ!というのをご存知の方、ぜひ教えてください。
・・・但し、どんなにすすめられても『女性の品格』は読まない。


(2008年1月30日記)