an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『銀河鉄道の夜』細野晴臣

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

国民的文学作品ともいえる宮澤賢治の代表作。小学校高学年くらいから手に取り、その世界に魅了され、生涯の愛読書となった方も多いはず。それぞれに思い入れが強いであろうこの作品のアニメーション映画化に際して、製作者は主要人物をすべて猫にするという大きな賭けに出ました。しかし、危惧されていた安っぽいファンタジーに陥ることなく、ほの暗く果てしない空間を浮遊するような、静謐感あふれる傑作となりました。
「ここよりはじまる」というエンドクレジット〜メインテーマが流れると同時に“ミスターにっぽん昔話”常田富士男氏のゆったりとした「わたくしという現象は・・・」に始まる『春と修羅』序の朗読。宮澤賢治の魂にほんの少しふれることのできる、稀有の瞬間であります。

・・・いかん。映画レビューになっとる(笑)。
音楽というのは言葉で表現することが難しいものですが、「艶っぽい」とか「寂しげ」なんて形容できたり、ジャズっぽいとか民族調なんていうニュアンスとしての「匂い」で伝えたりできますが、このメインテーマにはそういった情緒や匂いがありません。あえていうなら無機質な、幾何学的なイメージですが、それがどんどん展開していくような・・・うーん、鉱物を愛した人の作品にぴったりの曲ではありませんか。
シーンにあわせた華やかな曲や、荘厳なミサ曲、ドヴォルザークのアレンジなど、サントラならではの多彩な仕上がりになっています。これは買いですよ!
(2006.6.5記)


>追記
いうまでもありませんが、必読、必見。

新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)

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