an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『ひらがな日本美術史』橋本治

ひらがな日本美術史5

ひらがな日本美術史5

この美術エッセイは小難しい専門用語は使われず、一編で一人の表現者(あるいはひとつの作品)をモチーフにし、ボリュームも読みやすくまとまっています。
知識に裏付けされた視点が相変わらずユニークで、そこでそうくるか!的一筋縄ではいかぬスリリングな読み物になっています。学校でこういうふうに日本美術を習っていたらちょっと人生観が変わってたかもしれないな。写真も立派で美しい。
さすが芸術新潮

安土桃山時代から江戸時代の初期まで、日本の文化はぜいたくの極限に走った。しかし、この時代の日本人は、あきれることにセンスがよかった。「ああ、昔の日本人は、金があってもセンスがよかったんだ」と思うと、なんだか涙が出そうになる。
(第3巻「カッコいいもの−泰西王侯騎馬図屏風」より)

およそ美を語るような風貌ではない著者ですが(失礼!)目は確かです。信用できます。・・・大昔の日本人の方が奇天烈でアバンギャルドで、カッコよかったようです。 特に曾我蕭白伊藤若沖という恐るべき絵描きの存在を教えてくれたシリーズ第5巻を推しますが、なにぶん高価な本ですので図書館で全巻どうぞ。 
(2006.4.4記)


>追記
橋本治、現在闘病中のようで心配です。
私は難しい評論などより、古典文学・美術を書いたものが好きかな。
こちらもどうぞ。

ハシモト式古典入門―これで古典がよくわかる (ゴマブックス)

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