an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

蜂蜜

セミフ・カプランオール監督のトルコ映画『蜂蜜』。
“ユスフ三部作”(壮年期を描いた『卵』、青年期は『ミルク』)の一つとして作られた本作は、幼年期のユスフを描いたものだ。



お父さんの仕事は蜂蜜を取ることだ。ロバを連れて森に分け入り、巣箱を仕掛ける。貧しいけれど、美人で働き者のお母さんと3人で暮らしている。
ユスフは吃音で、授業など注目を浴びる場ではうまく話が出来ないが、お父さんとささやき声でおしゃべりするのは大好きだ。木で船のおもちゃを作ってくれるし、花の名前も教えてくれる。



森をわたる風の音、木々のざわめきと川のせせらぎ、ミツバチの羽音・・・
ある時、ふいに父がいなくなる。
父の不在によって、そろそろと一歩を踏み出す幼いユスフが健気で胸に切なく、さざ波のような余韻がいつまでも残る映画だ。
ビクトル・エリセの映画が好きな人は必見と思われます。ぜひ!



(2013年7月9日記)