an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

映画二本

◆『キャピタリズム〜マネーは踊る』マイケル・ムーア監督

無断で社員に生命保険をかけて保険金をせしめたり、一切の保証もなく大量解雇する企業、詐欺みたいな手口で人々にお金を貸しつけまくった挙句、わずかな未払いで住みなれた家から住人を追いたてる銀行、人々が去り荒れ果ててゆく街・・・今回もまた気が遠くなるようなアメリカの惨状をたたみかける。
大きな袋を持って「俺たちの税金だろ!返してくれ!」と大銀行に押しかけ、それが叶わぬとなると「犯罪区域 立入禁止」と書いた黄色いテープで(←警察が使うようなものね)ぐるりと建物を囲ってみたり・・・相変わらずものすごいガッツ&ユーモアだなあと感心していたら、ラストで「俺だけじゃもう駄目だ。みんな、助けてくれ!」みたいな弱気なコメントが出てきてちょっと驚く。


◆『パブリック・エネミーズ』マイケル・マン監督

このところ狂った帽子屋さんとかなんとかパイレーツとか特殊メイク顔ばかり見ていたので新鮮でした、ノーメイクのジョニー・デップ。
今回は実在した銀行強盗、ジョン・デリンジャーを演じています。疲労の陰りをにじませた表情、特に唇を少し歪めてニヤリとするところなんかすごくいいな。
さらにいいのは敏腕FBIを演じたクリスチャン・ベールの無表情だ。
無残に部下を殺された時も、晴れて念願かなった時も同じこの表情。なにもかもを自身の内にのみこんでしまう、その貌。
30年代らしい陰影のあるクラシカルな雰囲気と、犯罪者とみれば銃を乱射しまくってたちまちハチの巣にしてしまう無情血みどろシーンとのコントラストが刺激的かつとても端正な作品に仕上がっています。ぜひ。


      


(2011年1月26日記)