驚いた。土曜日とはいえ1時間前に行って残席わずか。無名の監督が撮ったドキュメンタリーであるが、「精神病を発症した娘を両親が20年以上自宅に軟禁、それを弟が撮影」というショッキングな内容は一般の方々も興味をそそられるものらしい。(東京では連日立ち見がでるほどというから、新聞やTVで取り上げられたのかもしれませんね)。
しかし私は精神障害者支援を生業にして早10年選手のプロである。「さあ、かかってこい」くらいな意気込みで出向いたわけですよ。
・・・・・・つらかった。これは思いのほかしんどい映画だ。
鑑賞者はもしかしたらまこさんの急性症状(支離滅裂なことを言ったり叫んだり)に圧倒されたかもしれないが、私は老いた父と向き合って静かに話すラストシーンが心に重く沈んだ。「分かりあえない絶望感」そのもの。
しかも、弟である監督は怒っている。静かな、震えるような怒りを感じる。
「ある意味、充実した人生だったのでは」と娘の葬式で言い放った父に対してか、ドアに南京錠をつけて娘を軟禁した母に対してか、時間外で留守電に切り替わった「こころの相談電話」に対してか、あるいは抗いながらも結局なすすべなく姉を救えなかった自分自身に対してか。
我が家の25年は統合失調症の対応の失敗例です。
こう言いきる監督に、世の中には取り返しがつかないことがある、というごく当たり前のことを思い知らされたわけであるが、かといってどうすればよかったのか私にはわからない。行き場のない気持ちでぼんやりしながらこれを書いている。