・・・という詩人がいましてね。
文学史のメインストリームからは逸れた人なので知らない人がおられるかもしれませんが、今Wikiで見たら稲垣足穂と同い年でした。ま、そのへんの時代の人です。明治の人。で、その尾形亀之助の詩集が、松本竣介の画を添えて、瀟洒な姿で夏葉社からで出たと。
・・・買うしかない。
私は日常的に詩集を買うなどということもなければ特に詩を愛好しているわけ
でもありません。しかしこれはもう、ぜひとも、生きづらさを抱えた若い人たちに手に取ってみてほしい。自信を持っておすすめする。
常々思っていたのですが、イマドキの人たちはとかくデジタルな表現に目がにいきがちで、例えば日本の近代文学なんかにはまったく疎いように思いますがどうでしょう。ちょっと戦前くらいまで振り返っただけでも、前に私が書いた「こんな年上がいるならワタシのほうが全然マシ」という人たちが実はごろごろいるわけですよ(笑 。年季が入っているので底力あります、日本文学。
「こんな人がいる」「こんな表現の仕方がある」という発見は、人生を豊かにするものの一つだと思います、いくつになっても。
そしてこの詩集の解説が能町みね子さんなんですねえ。最初ははい?!と思いましたが、読むとこれがすばらしい。
私はそのちょっと異様なほどの飾り気のなさ、空虚さ、かといって決して暗澹たる世界が広がっているわけではなく、ただ明るい空間に点や線がほんの少し描いてある絵のような様子が大変気に入ってしまい、この余白だらけの詩を掌中におさめたいと、
あと私の中で重い言葉として残ったのが「餓死自殺願望」。
食べることを拒絶する。ふっと辻潤が思い浮かびましたが、21世紀、この飽食の時代に生まれた私には不可解な感覚について、誰かの教えを請いたい。