an-pon雑記帳

表現者と勝負師が好きです。

『神の子どもたちはみな踊る』村上春樹

阪神大震災をモチーフにした短編集です。大真面目なな語りで「UFO」だの「かえるくん」だのが登場し、日常と非日常が交錯して奇妙な余韻を残しますが、読みすすむごとにそれぞれの癒しがたい喪失感がせまってくるのです。
しかし、ラストの一編では主人公が「たとえ空が落ちてきても、大地が音を立てて裂けても」、大事な人を守るべく生きていこうとするところで終わっています。これがうまいなぁ。粋です。

村上春樹は、地下鉄サリン事件被害者を取材した「アンダーグラウンド」という大仕事によって、現実と人間を見る目が深まったのじゃなかろうかと思います。より表現に奥行きが増したような。・・・でも長編はちょっとくどい(読んでないけど)。
(2006.1.22記)


>追記
今やノーベル文学賞獲得か?といわれるほどのすごいお方に。
その人気の上昇とともにすっかり読まなくなってしまったのですが、これは愛読書です。